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【まことのFACT】THE世界大学ランキング2019に見る、アジアにおける日本の立ち位置 Tsinghua_University_-_pointy_building

Times Higher Education(THE)の世界大学ランキング2019が発表されました。早速ランキングに関連する様々な記事が出ていて、そのうちのいくつかを読みましたが、ある記事では『(略)大学の「数」で勝負する日本』と題して、日本は1,000位以内に入っている大学の数がアメリカの大学に次いで2番目に多い!なんていう評価が出ていてびっくりしました。1,000位以内の大学数の多さで競っているとは…。ある意味新しい視点です。今年のランキングでは、中国の名門校、清華大学がアジア1位になりましたね。評論記事では「やはり中国勢の勢いがすごい」などの論調の記事が多いようです。私自身も自分でTHEのランキングを詳しく眺めてみて感じることがありましたので、データとともに取り急ぎまとめてみました。特に私が気になっているのは、中国ではなく、アジア全体での日本の立ち位置です。

日本は科学技術立国を自負しており、今でもアメリカ、中国に次いで3番目の地位にいるのではと思っている方がたくさんいると思います。ましてやアジアでは中国と接戦しているに違いないと。恐らく現状はまだそうであると私も思いますが、客観的なデータを見る限り、産業からの申請が大半である特許数以外で、論文数や論文の引用数はそれを表す結果になっていない現状があります。そして、今回のランキングでも、やはり日本がアジアで研究において確たる地位を誇っていることを示す結果になっていないように思います。

実はちょうど先日9月19日、20日に神戸で開催された「RA協議会 第4回年次大会」に弊社も出展し、セミナー「THEランキングを急速に伸ばすアジアの大学に学ぶ国際化・研究広報の最新動向」にて私自身、アジアの大学の大学ランキングにおける課題と、ランキングを急速に伸ばす韓国の大学の戦略について、独自に行った事例調査の結果を詳しくお話しさせていただいたところでした。そのセミナーで、お隣韓国は、国全体としては日本と同じように大学ランキングで苦戦しているが、その中でもしっかり順位を上げている大学があること、そしてそれらの大学はTHEでランキングを上げるための戦い方をしっかり学び、その戦いのルールに従って健闘しているとお伝えしました。興味がある方はプレゼンテーションをご参照ください。そんな韓国の動向も大変気になるところです。

THEランキングには、世界大学ランキング、アジア大学ランキング、日本の大学ランキングがありますが、2019版はまだ世界大学ランキングしか発表されていませんので、自分で世界大学ランキング2019において日本と地理的に近い東アジア・東南アジア地域のトップ30大学のランキングと各指標をまとめてみました。以下の表をご覧ください。

Googleスプレッドシートのダウンロードはこちらから

まずはTOP5大学。

1位 Tsinghua University (清華大学)
2位 National University of Singapore (シンガポール国立大学)
3位 Peking University (北京大学)
4位 University of Hong Kong (香港大学)
5位 The University of Tokyo (東京大学)

特筆すべきは、中国の大学が初のアジア1位に輝いたことです。2016年にランキングシステムが大幅改定され、そこで軒並み日本の大学のランキングが下落したことで、それまでずっとアジア1位であった東京大学が突然7位になってしまいました。代わって1位になったのがシンガポール国立大学です。そこからシンガポール国立大学は3年間首位の座を守っていましたが、やはり中国の勢いが今回は上回りました。昨年は国内最大のライバルである3位の北京大学とはわずか0.2ポイント差での2位でしたので、今回は数3.6ポイント差をつけて、しかもアジア1位。清華大学の経営陣はきっと大喜びでしょう。ただ、シンガポール国立大学とは0.4ポイントしか差がないので、来年はまた順位が入れ替わるかもしれません。ちなみに先月、弊社のお客様である清華大学の准教授にお会いした際に、清華大学の研究者がいかにしのぎを削って研究しているか、その研究環境がいかに競争的であるかという話を、これでもかという程伺ったので、このまま攻め続けていけばこの大学はまだまだ伸びていくかもしれません。

次に国別で見てみましょう。各国いくつの大学が30位にランクインしているでしょうか。

1位 中国(9大学)
2位 韓国(7大学)
3位 日本(6大学)
4位 香港(5大学)
5位 シンガポール(2大学)

国別の数字は日本ではなぜかあまり語られることがありません。日本にとって決して好ましい数字ではないからかもしれません。韓国の大学数は200程度、日本は750以上の大学があるのに対し、トップ30位に入る大学数は日本が6大学、韓国は7大学と負けています。日本の研究はアジアでトップクラスであるのだから、せめて旧7帝大が全て入っていてもおかしくないんじゃないかと私も思いますが、実際にはそうはなっていません。もう1つ意外なことに、韓国は私立大学が3校ランクインしていますが、日本の私立大学はゼロです。先月インタビューに伺い事例調査発表でも取り上げた韓国の私立大学のSungkyunkwan Universityが今年さらにランキングを上げて、京都大学の次にランクインしています。この大学は、ランキングをどう上げるか、本当によく研究し実行していると感心してしまいました。

中国は国を挙げて科学技術に取り組んでいるので、日本との単純比較は無意味だと思いますが、総じて研究の質が年々上がっているというのは紛れもない事実です。そしてこれからも上がっていく事は間違いないと思います。すべてにおいて今の日本と規模が違うので、中国は必ずしもいい意味だけでなく、悪い意味でも話題に上りがちですが、私自身の中国アカデミアに対する印象は実際にたくさんの中国人の研究者や大学関係者の方々とお会いしてお話を聞く機会を通じて、大きく変わりました。科学技術への投資の規模に関わらず、中国から日本が学ぶべきこと、学んで実践できることはたくさんあると感じています。それについてはまた次の機会に書ければと思います。

意外な事に、香港もあの国の規模でなんと5大学も30位にランクインしています。シンガポール同様に、英語を強みとしているため、THEランキングを構成する指標のうちでも特にInternational Outlookがどの大学も非常に高く、Citationも同様に高い大学が多いです。

Citationは特に日本の大学が課題に挙げている指標でもあります。アジアトップ30大学と比較しても、残念なことにCitationが最も低い大学の下位4位が全て日本の大学です。Citationと関連が深いInternational Outlookも同様に日本の大学は総じて数値が低く、下位5大学中、3大学が日本の大学です。それ以外の指標は各大学によりまちまちですが、共通している課題が上記2点です。International Outlookはスコアに占める割合が僅か7.5%ですが、この数字は他のスコアに影響を及ぼすので、波及効果も見込み、注力していく必要があるのかなと思います。

日本の大学について、ついついマイナスな事ばかり並べてしまいましたが、実はアジア諸外国の大学関係者の方々にお話を伺っていると必ず言及されるのが「日本の大学の研究力の底力」です。戦後から基礎研究に重きをおき、こつこつと実績を積み上げてきた日本のノウハウは、どんなに新興国が予算や人材をつぎ込んでもそう簡単に構築できるものではありません。その基礎に大学が大きく貢献してきました。私は、今日本の大学に突きつけられている問いは、「あなたの大学は、大学ランキングをどう捉え、どう扱うか」だと思います。

文科省の目標がどうあれ、「我々は独自路線で行く」とランキングに目を向けず、大学が正しいと思う独自の価値を追求するのも一つの選択肢です。また「いや、ランキングの世界で真っ向から戦い、世界から優秀な研究者や技術を取り込む戦略にしたい」と目標を定めることも大変重要だと思います。ただ、海外の大学と比較すると、今の日本の大学の多くは、どちらにも戦略を決めかねていない、あるいは決めていても実行に移せない理由があるのではないか、と感じることがよくあります。後者を選択した際は徹底的にメカニズムを解明して、一つ一つ実行する。決断と実行あるのみ。これに尽きます。多くの日本の大学が本来の実力を世界に認められ、数年後にまた日本勢が大きく巻き返していることを期待したいと思います。

この記事を書いた人

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湯浅 誠

カクタス・コミュニケーションズ株式会社、代表取締役。1978年千葉県生まれ。大学を卒業後に渡英。その後インドに渡り、Cactus Communicationsに就業。現在は日本法人であるカクタス・コミュニケーションズ株式会社の代表取締役を務める。

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