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【加納愛のMarkedemia】大学広報戦略におけるマーケティング思考 ai

こんにちは、カクタスのブランディング&事業開発部の加納です。

社内では研究者向けのブランド、エディテージのマーケティング、広報、ブランディング、サービス開発に関わっています。そして顧客向けには、大学・研究機関や学協会を中心に、研究の国際広報セールス兼コンサルタント、クリエイティブディレクターとして活動しています。…ややこしいですが、簡単に言ってしまえば社内・社外問わずのいわゆる便利屋さんです。

業務が多岐に渡り常に異なる仕事をしているので、社内でも昔馴染みの同僚に「最近のあなたは何者?(What are you, lately?)」と聞かれることもしばしば。その時々で 「今はクリエイター」「今月はコンサル 」「最近広報がメインかな」なんて答えていますが、今も昔も、自分のコアはマーケターだと思っています。むしろマーケティングというコアが、すべての仕事の骨組みになっていると実感しています。

そして、もう少し言うと、日本のアカデミア業界、特に大学・研究機関には、組織の経営においてもっともっとマーケティング的な考え方が必要なんじゃないのかな、と感じています。

そこで今日は「マーケティングって市場開拓でしょ?」「単なる企業の商品流通戦略でしょ?公的機関に近い大学や研究機関、ましてや非営利の学協会には関係ないよ」という方に、基本的なマーケティングの考え方はどんな組織の広報活動にもあてはまるという話をしたいと思います。

まずは 「アメリカ・マーケティング協会(AMA)」が2013年に提案したマーケティングの定義をご紹介しましょう。

 

マーケティングとは?

 Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large. 

「 マーケティングとは、消費者、顧客、パートナー、および広く社会にとって価値のある提供物を創造し、伝達し、流通させ、交換するための活動、一連の制度、およびプロセスである」

 

この定義にも「広く社会にとって価値のある提供物を想像し、伝達し、流通させ」とあるように、マーケティングは必ずしも商品やサービスの販売に関わるものではなく、あらゆる種類の価値を生み出す、すべての組織に必要なものだと私は考えています。 当然、人類の文明・文化に価値のある知識や技術を生み出している大学や研究機関には必要な機能です。

企業においては、マーケティングは経営企画、サービス・製品開発、流通から顧客理解まで、企業の価値作りの上流から下流までを網羅する幅広い仕事です。カクタスは特にマーケティングに強い会社で、その考え方が社内の意思決定の中心を担っています。社内プロジェクトでも、クライアント・プロジェクトでも、仕事の大小に関わらずプランニングの段階で必ず最初に押さえなければならないごく基本的な3つの質問があります。

「達成したいゴールはなにか?成功を評価できる数値ターゲットはあるか? 」

「行動や意思決定に影響を与えたいターゲットはだれか? 」

「アウトリーチの母数は?リード率は?期待するコンバージョン率は?」

もちろんこれがすべてではありませんが、少なくともこの3点をクリアしていれば、闇雲に買われもしないサービスや誰にも読まれもしない情報を提供することに余計なコストと労力を使うことはなくなります。これを大学のマーケティング活動の実務の例にあてはめて考えてみたいと思います。

***

  1. ゴールと成功標を明確にする

ほとんどの大学には「大きな目標」は必ず存在します。「留学生の数を増やしたい」「教員の論文の引用数を増やしたい」「大学の海外での認知度を上げたい」「特許の数を増やしたい」などなど。例えば留学生の割合を10年後に20%まで引き上げる」のようなヴィジョンが、毎年追加で新規留学生を何人増やす、というところまで数値目標に落とし込まれていれば、50人、100人、といった具体的な数値アップに向けてアウトリーチ戦略を考えればいいことになります 。ここまでターゲットが具体化されていると、企画はずっと立てやすくなります。

  1. ターゲティングを明確にする

次に必要なのは誰を対象にマーケティングを行うのかを決める「ターゲティング」です。ターゲティングには大きく2つあります。一つは、既存のマーケットをより深掘りする方法。もう一つは新しいマーケットを開拓する方法です。

例えば、すでにある大学の東アジアからの留学生が最も多い場合、すでにその地域での大学の認知度はあるわけですから、その地域内での広報活動や広報媒体をさらに増やすだけで目標は達成できるかもしれません。もう東アジアには拡大するポテンシャルが見込めない、むしろ出身地域のダイバーシティを上げたいという場合には、ヨーロッパや中東などまだ大学の認知度が高くない地域へのブランディングを早々に始める必要があります。いずれにしても、ターゲット層を明確にしないと、やたらとコストをかけてがんばっているのに結果が伴わない状況に陥りがちです。

  1. アウトリーチ、リード、コンバージョン

ターゲットが決まったら、次はアウトリーチ、リード、コンバージョン、それぞれの目標数値を試算します。例えば、留学生からの願書提出数の目標が500件で、過去の実績から請求数に対する提出率が50%、パンフレット配布数に対する願書請求率が2%だとすると、500件取るためには50,000枚の留学パンフレットの配布が必要になります。

・アウトリーチ数(例:留学パンフレット配布数):50,000件

・リード数(例:願書請求数):1,000件(2%)

・コンバージョン数(例:願書提出目標):500件(50%)

パンフレットに限らず、SNSなど他の媒体からの情報発信でも同じことですが、目標を達成するためには逆算して情報が何人の目に触れ、そのうちの何人がアクションを起こすのかの試算なくして予算計画は立てられません。ただ、必ずしもパンフレットの配布数を倍にすればコンバージョン数も倍になるというわけではなく、大学の認知度が低い地域に同じだけ配布したらリード率、コンバージョン率は通常より低い可能性があることも考慮に入れる必要があります。

***

マーケティング視点から、プランニングにおける基本的な3つの問いをあげましたが、これは「何をやるべきか(What)」を大まかに決める上で非常に役に立ちます。もちろん「どうやるか(How)」も重要なのですが、実際のところ、HowはWhatさえしっかり決まっていれば、日々試行錯誤しマーケットの反応を評価しながら柔軟に変えていくべきものです。

大学広報は難しい、と言われていますが、その根本的な原因はターゲット設定の曖昧さによることが多いと感じます。独自の教育プログラム、優れた研究環境、あるいは新しい知識を価値=売り物と考えた時、それを誰にどう届け、どのようなリアクションを引き出すか、その結果社会にどんな影響を与えたいか。その観点では、企業価値を市場に届けることも、大学の価値を社会に伝えることも、かなり似た活動のように思えます。マーケティングの定義に従って大学の情報流通の仕組みを眺めると、違った角度から新しい戦略が見えてくるかもしれません。

この記事を書いた人

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加納 愛

2007年よりカクタスグループのインド本社、Cactus Communications Pvt. Ltd.にて教育部門、アカデミア部門のマーケティング部に所属。ブランドマネージャーを経て、2014年より日本子会社であるカクタス・コミュニケーションズ株式会社に移動し、現在は日本マーケット向けリテールマーケティングおよびブランディング、アカデミア法人向け事業開発を担当。

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